いろいろな原因で、仮にオール・オン・フォーができなくても全く心配はいりません。オール・オン・フォーには及びませんが、従来型の入れ歯も進化しています。
自分の歯やインプラントと違い、取り外しの入れ歯は顎の骨に固定されていません。ですから、どのように安定させて、外れにくくするかが、入れ歯治療の最大の問題点です。
その解決法として磁石式義歯(マグネット義歯)やフレキシブル義歯、ソフト義歯という快適入れ歯があります。
自分の根も利用できる磁石式義歯
磁石式義歯は、小型磁石の磁力によって固定する新しい入れ歯です。入れ歯には超小型磁石を埋め込み、自分の歯根の側には磁石をくっつける特殊ステンレス金属(キーパー)とつけ、磁力で安定させます。この磁石とキーパーの組み合わせを磁性アタッチメントといいます。
磁性アタッチメントは天然の歯にもインプラントにも利用できます。自分の歯が根の部分だけでも残っている場合は、その歯にキーパーを埋め込みます。歯が1本も無い方はインプラントを埋め込んでキーパーを取り付けます。
自分の歯に磁性アタッチメントをつけたものが向かって左
インプラントを埋め込んでアタッチメントを付けたものが向かって右
自分の歯に磁性アタッチメントを付けたものが向かって左
インプラントを埋め込んでアタッチメントを付けたものが向かって右
取り外し式の入れ歯なので、総入れ歯と同様の技術で作れることと、キーパーの土台になる自分の歯を最後まで利用できることが磁石式義歯の長所です。
ここで、磁性アタッチメントの磁力はそれほど強くはないため、磁石は複数個取付けるのが普通です。しかし、インプラントを利用して、3個以上アタッチメントを付けるであるならば、対費用効果はオール・オン・フォーの方が高いといえます。
4個以上の磁性アタッチメントを付けた取り外し義歯の値段は、オール・オン・フォーに近くなりますので、オール・オン・フォーの方が固定式で自然で優れているということです。
今はオール・オン・フォー時代になりましたので、インプラント支台の磁性アタッチメントの数は2個になると思います。
欠点として、入れ歯の磁石が入っているところはプラスチックが薄くなってしまうため、よく入れ歯が破折してしまうことです。入れ歯を金属で補強することで破折を防止できます。
バネの見えないフレキシブル義歯
入れ歯の素材をフレキシブル樹脂にした新しい入れ歯です。フレキシブル義歯の最大のメリットは、部分入れ歯の場合、入れ歯を維持するバネ(クラスプ)が無いため、見た目が自然で美しいということです。クラスプが無いため「ノンクラスプ義歯」とも言われています。
左:保険のバネ式入れ歯
右:フレキサイト義歯
金属のバネが無くなっている。
左:金属が見える外側にもあるのが保険のバネ式入れ歯
右:見える外側にはピンク色の樹脂のバネ
内側の補強は金属だが見えない。
部分入れ歯のフレキシブル義歯では、見かけが気になる金属色のバネを無くすことができます。どこに入れ歯がはいっているか分かりません。
フレキシブル樹脂は、従来からある保険のプラスチック樹脂に比べて軟らかく、たわむ素材のため、痛くなりにくく、噛みやすいと言えます。特に、バネ式の部分入れ歯を使っている方や、保険の総入れ歯を使っている方には、フィット感などの点で満足頂けるのではないかと思います。
左:フレキシブル総義歯(上顎) 右:フレキシブル総義歯(下顎)
保険の入れ歯と見た目は変わりませんが、樹脂が軟らかくたわむため、適合が良く、外れにくい入れ歯です。
ところで、部分入れ歯の場合、支えになっている歯が抜けた時には、人工の歯を追加しなければなりません。フレキシブル樹脂は修理用のレジンがくっつきにくい素材であるという点がデメリットです。入れ歯を保持している歯が抜けた時は、もう一度新しい入れ歯を作らなければなりません。
しかし、修理の時に人工歯を追加できるフレキシブル樹脂もあります。フレキシブル樹脂には多種ありますので、素材の特性について熟知している歯科医師から治療を受けるようにしましょう。
全身状態が悪い方のためのソフト義歯(ソフトデンチャー)
ソフト義歯は、「入れ歯が痛くて合わない」という方におすすめの入れ歯です。顎の骨がやせていたり、骨の出っ張りなどがあったりすると、痛みが起きることがよくあります。歯茎の下には骨があるために、従来の硬い樹脂の入れ歯では、噛みしめたときに押された歯茎が痛くなるのです。
そういった症状のある方は、ソフト義歯を試してはいかがでしょうか。
ソフト義歯は、顎の骨と粘膜の保護を第一に考えた入れ歯で、歯茎に接する面に特殊な加工を施してあります。入れ歯の内側がシリコンゴムで薄くコーティングされており、そのクッション性によって歯茎に加わる負担を軽くし、痛くない入れ歯になっているのです。
ソフト義歯は、お口の中で体温によってやわらかくなり歯茎に吸い付くので、装着感にも優れています。シリコンは吸着力が強く、唾液によってまるで吸盤のような働きをします。入れ歯をしているのも忘れるほどのフィット感があります。また、歯茎にぴったり合っていて隙間が少ないため、食べカスがはさまりにくいという長所もあります。
作業行程は、まず従来型の入れ歯を作ってから、なじむまで使って頂きます。次に、その入れ歯をお預かりし、歯科技工所でソフト義歯加工をします。したがって、従来型の樹脂でもある程度フィットした入れ歯が作れる方というのが成功の条件です。つまり、従来の素材でも成功できる入れ歯を作れる方であれば、ソフト義歯でさらに適合の良い入れ歯が作れるということです。
全身疾患があって、オール・オン・フォーなどのインプラント手術ができない人にはおすすめの入れ歯だと思います。
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